さくログ

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【世界初!勉強したくてもできない子どもたちを救うフィリピンの公教育制度 [Mobile Open High School Program] ー私たちのカミギンライフ vol. 10-】

Maayong hapon!

どうもこんにちは!さくらんぼです。

 

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今回は、フィリピンのカミギン島で行われている

子どもたちに教育を届ける公教育プログラム、

Mobile Open High School Program(MOHSP)についてお伝えしたいと思います。

 

世界でカミギン、島に唯一無二のMobile Open High School Program(MOHSP)

 

まずMobile Open High School (MOHSP)とはなんなのか。

 

平日に学校に通えなくなった生徒達が、

週に1回の授業を受け続けることで教育課程修了を目指すことが出来る公教育制度です。

 

モバイル(Mobile)の文字通り、

子どもたちが物理的、金銭的、身体的な理由に学校に行けない代わりに、

先生が週に一回ずつ子どもたちの家をバイクなどを使って訪ねて授業を展開します。

 

MOHSPはセルフラーニングが基盤の学習法となっていて、
生徒たちは、先生の助けを借りながら、

モジュールと呼ばれる教科書のようなものを指定の数解き進めることで

次の学年に進学することができます。

 

今回はそんなカミギン島の若者たちのセーフティーネットとなっているMOHSPが

「なぜ必要とされているのか」についてまとめてみたいと思います。

  

 

平日に学校に行けなくなる理由とはどんなものがあるのか

  

生徒によって平日の学校に通えなくなった理由は様々。

それぞれのケースごとに見ていきましょう。

 

ケース1 :

家計を支えるために、仕事をしなければいけない

 

家族の暮らしを支えるために、平日も働く必要のある子がいます。

 

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男の子の仕事の多くは、草刈りやココナッツ取り、工事現場での労働、農作業、漁業、などを体力勝負のもの。家事のお手伝いをしている子もいたりもします。

ココナッツ取りの現場など目にしましたが、

命綱もなしに20mものココナッツの木に登っていきます。超人的。

 

家族の生活を支えるために、平日に学校で教育を受けている時間を削ってまで、お金を稼がなくてはならないのです。

 

また、女の子に多く見られるのは、

  1. 家政婦やベビーシッターとして誰かの家で働いている場合と
  2. 自分の家の家事や兄弟の面倒を見なければならない場合


日本だと、「家事をするために学校に行けない」
なんてことは、なかなか想像しづらいですよね。

 

フィリピンを含む多くの途上国では、

また、貧困家庭であるほど兄弟の多いことが多く、

戦時中の日本のような1家庭、9人兄弟なんて状況がざらにあったりします。

 

そういった状況の中で、女の子は家族の中で役割として、

他の兄弟や親戚の子どもの世話をしなければならないケースが少なくありません。

 

 

ケース2:

 学校と家の物理的な距離がある場合

 

学校と家の距離が物理的に離れていたり、山奥の方に住んでいたりすると、

週5日の学校に通えなくなってしまうケースがあります。

 

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島一周64キロしかない小さなカミギン島ですが、火山島であるため、割と標高の高低差がある島です。

 

2019年現在で小学校は56校、

Integrated Schoolが (小中高)5校、High school(中高)が 11校存在しています。


小学校は島のいろんな場所に散らばって所在していますが、

中学高校となってくると、山の方にはほとんどなく

多くの学校が海沿いに位置しているという現状があります。

 

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[大家族で親戚もみんな近くに住んでいる山奥に住む家族]

 

ある程度の街中に住んでいる場合は、

家が遠くてもジープニー(現地の路線バス)やトライシクル(3輪のトゥクトゥク的なもの)、もしくは徒歩での通学が可能です。

 

一方、山奥に住んでいる場合

バイクなどを使ってまで大通りまで出る必要があります。

山の上の方に住んでいる貧しい家庭は、

定期的なガソリン代、そもそもバイクを買うことができません。

 

そのため、平日毎日学校に通うことをやむなく諦めてしまいます。

 

貧困と物理的距離の問題は互いに影響し合っていることが多いように思えます。

 

ケース3:

早期妊娠

 

本来学校に通うべきである13歳、14歳から18歳などの年齢で妊娠をしてしまうという女の子が一定数いるのが現状です。

 

なんとも悲しいのが、早期妊娠の結果として

シングルマザーの女の子が多いということ。

 

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[2人とも15歳で妊娠・出産。右側の子はシングルマザーという苦しい状況の中でも子育てと勉強に奮闘している]

 

そもそもの文化背景として、カトリックの文化が浸透しているカミギン島では、中絶は違法とされていて

妊娠したら産むこと以外の選択肢はありません。

 

2018年に保健局と病院に報告されたカミギン島全土の早期妊娠は、計221名。

 

フィリピンの早期妊娠の問題は女の子の教育機会損失に直結していると指摘され、

フィリピン全土の規模でも問題意識を持って取り組み始めています。

 

それでも、

性教育を受けられる機会だけではなく、

現実を見た時に、この島の特徴を理解した上で避妊具にアクセスするための実用的な方法

などを向上させる必要があることを感じます。

 

3分で感じる!フィリピンで夢を描くある生徒の物語 - YouTube

 

 この動画で撮影に協力してくれた女の子も、

早期妊娠によってレギュラーの学校からこのMOHSPに転校してきた子の一人です。

こちら見ていただくと、MOHSPの雰囲気などよく感じて頂けると思います。

 

 

ケース4

 身体的な障害がある場合

 

足が思うように動かない、大きな病気を持っているなどの理由によって、

徒歩という通学手段が不可能な子どもたちのうち

主に金銭的な理由でその他の手段(バイク、ジープニー、モトレラ)でも代行することができない子は、MOHSPに転校してきます。

 

特に山奥に住んでいて且つ身体的なハンディキャップがあると通学することは厳しくなります。

 

 

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[彼女は足が満足に動かず、家も山の上にあることから学校通学が厳しい。MOHSPを通して教育を受け続けています]

 

 

ケース5:

 不良行為やいじめなどでレギュラーから退学せざるを得なくなってしまった場合

 

特にこの場合、学校のドロップアウト率を

下げるためにMOHSPに生徒を送り込んでいる

という意味合いの方が強かったりもします。

 

生徒のモチベーションがあまり保たれず

1週間に一度のMOHSPでも、

中学の課程を終わらさないといけないから

仕方がなしに通っているというような現状があります。

 

また、大人数の中で行われる教育が肌が合わなかったり、クラスの友達や先生と上手くいかなかったりということが原因でMOHSPに

移動してくる子たちもいます。

 

そういった場合に、MOHSPのような

Alternativeな公教育があることは

学校社会のセーフティーネットの役割を果たしていると言えると思います。

 

 

 

最後に

 

細かな部分が未だに整えられておらず

公教育制度としてかなりカオスなところがあるのも事実です。

 

生徒一人一人にとって、

中学課程修了の意味は違うし、

目指すその先の姿もそれぞれ。

 

MOHSPで勉強する子たちが

厳しい環境の中でも、次の目標に向かって、

教科書を解き進める姿からは、

とてつもないパワーを感じます。

 

そういった、未来を必死で模索する生徒たちに届く授業をさらに良いものにするために、

できることはまだまだたくさんあると思っています。

 

MOHSPの先生と一緒に授業の質を向上させる

・MOHSPの生徒が勉強できる機会を提供する

・生徒や先生のモチベーションになるような企画を立ち上げる

 

残りの半年間最後まで足掻いて、

次のe-Eduのインターン生に上手くバトンを繋ぐことができるような

本当に現地の需要に行き届くプロジェクトの土台を作ることができればいいなと思います。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

もっと詳しく聞きたいという方は是非コメントをください💪

Salamat!!!